米技術業界の1〜9月の人員削減数が16万5925人に…前年比54%増
AIを理由とする削減が12万人超に…コスト削減を「AIウォッシング」と正当化する議論も
米大手ハイテク企業が人工知能(AI)に巨額の資金を投じる一方、既存組織の人員削減を加速させている。今年に入り、9月までの米技術業界における人員削減規模は16万人を突破した。
マイクロソフト(MS)やメタ(Meta)などのビッグテックに続き、最近ではディズニー(Disney)やNBCユニバーサル(NBCUniversal)といったメディア企業までが人員再編に乗り出している。AIが業務現場に急速に浸透する中、コスト削減や構造改革を「AI導入に伴う転換」として説明する、いわゆる「AIウォッシング(AI washing)」をめぐる議論も高まっている。
米雇用情報会社チャレンジャー(Challenger, Gray & Christmas)によると、今年1〜9月の米技術業界における人員削減発表数は16万5925人で、前年同期比で54%増加した。
同期間の米全企業における人員削減数が39%減少したこととは対照的だ。技術業界は全体の削減発表の29%を占め、業種別で最多となった。
ビッグテック、AI投資拡大と既存組織の縮小
AI投資競争が激化する中、企業内部の資金と人的リソースの配分も変化している。データセンターやAI半導体、クラウドインフラへの投資を増やす一方、既存事業や組織ではコストを削減する動きが目立つ。
MSは7月、全従業員の約2.1%にあたる4800人を削減した。商業部門やXbox事業などが対象となったが、同社はこれをAIによる直接的な代替とは区別している。
AIが反復業務を自動化することで、業務プロセスや必要なスキルセットが変化しているというのが会社側の説明だ。MSは過去1年間で4000人以上を優先順位の高い新規職務へと再配置しており、人員削減と並行して既存スタッフを必要分野へ移す取り組みも進めている。
メタも5月に全従業員の約10%を削減した。一部の組織では、AIを活用して従来よりも少人数でチームを運営する案も検討された。
しかし、人員削減が直ちに生産性向上につながったわけではない。一部のチームでは大幅な人員削減が議論されたものの、AIの信頼性やセキュリティ、生産性の問題が浮上し、追加の削減計画は撤回された。
組織再編とは別に、AI投資は拡大している。メタは今年、AIインフラや半導体などに1300億ドル以上を投じると予想される。既存組織の削減によって確保した資金がすべてAI投資に回っているとは言い切れないが、資金と人的リソースの重心がAIにシフトしていることは明らかだ。
「本当にAIのせいか」…広がる「AIウォッシング」議論
人員削減発表において、AIを直接的な理由として挙げる事例も増加した。チャレンジャーによると、今年1〜9月の米全業種において、AIを理由とした人員削減は12万136人にのぼり、全体の約21%を占めた。
ただし、これはAIが実際に12万人の雇用を代替したことを意味するわけではない。あくまで企業が削減理由としてAIを提示したケースを合算した数値である。
このプロセスで「AIウォッシング」という言葉も浮上した。コスト削減や業績不振、既存事業の再編に伴うリストラを、AI導入による生産性向上や組織の効率化という名目で包装することを指す。
市場調査会社ガートナー(Gartner)によると、2025年の人員削減のうち、AIによる生産性向上と直接関連する割合は1%未満に過ぎなかった。削減プロセスにおいて、実際のAIの効果よりもこれを誇張して説明するケースがあるというのがガートナーの分析だ。
マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院のポール・オスターマン名誉教授も、米経済誌フォーチュン(Fortune)を通じてこの現象を指摘した。同教授は「AIは大規模な人員削減を正当化するための完璧な言い訳」であり、企業にとって解雇を経営陣の意思決定ではなく「技術変化に伴う結果」として説明しやすくなったと述べた。
AIが業務形態や必要な人材を変化させていることは疑いようがない。ただし、企業が発表する「AI由来の削減」と、実際にAIが代替した雇用数を同列に語ることは難しい。
ディズニーも削減の列へ…メディア業界も組織再編
人員再編はメディア業界でも続いている。ウォルト・ディズニーは先月29日、人事および技術部門を中心に数百人を削減した。今年4月に約1000人の雇用を削減したのに続く追加措置だ。
テレビ事業の組織再編も進めている。ABCエンターテインメント、20世紀テレビジョン、Huluオリジナル、フリーフォームなどが影響を受ける可能性があり、さらなる数百人規模の削減も取り沙汰されている。既存のテレビブランド中心の組織を、ストリーミング顧客中心に再編することが骨子だ。
NBCユニバーサルも1日、グローバルストリーミング技術部門の人員削減に着手した。
ただし、これらメディア企業の削減までをAIによる代替と結びつけることは難しい。ディズニーの直接的な背景は、既存のテレビ事業の縮小とストリーミングを中心とした事業再編にある。
テクノロジー業界の事情も同様だ。AIが一部の業務を代替しているものの、コスト削減、事業再編、投資優先順位の調整が同時に進行している。AIを理由に掲げる削減は急速に増えたが、実際にAIがなければ維持されていたはずの雇用がどれほどあるのかを確認することは困難だ。
むしろ明らかになったのは、企業が人や資本を配分する基準が変化しているという点だ。AI投資を増やし、既存組織を縮小する選択が続く中、AIは新たな雇用を創出する技術であると同時に、既存の人員や組織の必要性を再評価する基準となっている。







