9月の時間給、前月比0.1%上昇にとどまる…雇用増加も2万9,000人に縮小
賃金・物価の連鎖的上昇への懸念緩和…追加引き締めを見極める14日のCPIに注目
米国の雇用と賃金の上昇基調が鈍化したことで、連邦準備制度(FRB)による10月利下げ(※記事原文の文脈に合わせて「金利据え置き」に修正)期待が高まった。労働市場から物価を一段と刺激する圧力が強まっているというシグナルが弱まり、FRBが次なる指標を見極める余裕を得たとの評価が出ている。
FRBは先月、政策金利を0.25パーセントポイント引き上げ、年3.75〜4.00パーセントに調整した。エネルギー価格の上昇や人工知能(AI)投資の拡大に伴う物価圧力に対応するためだ。ニューヨーク連邦準備銀行のジョン・ウィリアムズ総裁は先月29日、物価を引き上げたショックが定着しないようにし、そのショックにともなう二次的効果を抑制しなければならないと強調した。
賃金はこうした二次的効果が現れ得る経路の一つだ。生活費の上昇を補うために賃金引き上げが加速し、企業が増大した人件費を製品やサービスの価格に転嫁すれば物価が再び上昇する。上がった物価がさらに賃金引き上げを刺激するプロセスが繰り返されれば、当初のショックが弱まってもインフレが持続しかねない。いわゆる「賃金・物価の悪循環」である。
利上げはこうした流れを抑制する手段だ。借入コストが高まれば消費と投資が冷え込み、企業の採用需要も減少しかねない。労働需要が弱まれば賃金上昇圧力も低下する。ウィリアムズ総裁も、金融政策でエネルギー供給の目詰まりを直接解決することはできないが、そのショックが広範囲かつ持続的な物価上昇に波及するリスクは軽減できると説明した。
今回の雇用統計で確認されたのは、賃金上昇スピードの鈍化だ。米労働省労働統計局(BLS)が2日に発表した9月の民間部門の時間給平均は前月比0.1%上昇し、8月の0.3%から伸びが縮小した。前年同月比の上昇率は3.0%だった。先立って発表された8月の実質時間給平均は前年同月比0.3%減少した。物価上昇を反映した時間給の購買力が低下する中、9月には名目賃金の上昇スピードも緩やかになったのだ。こうした賃金上昇基調の鈍化は、人件費が追加的な値上げを刺激する圧力を和らげる要因と解釈される。
企業の採用需要と連動する雇用指標も総じて鈍化した。9月の非農業部門の雇用者数は前月比2万9,000人増にとどまり、8月の改定値である13万3,000人から増加幅が縮小した。7月と8月の雇用増加分は合計で6万人の下方修正となり、失業率は4.1%から4.2%へ上昇した。賃金の鈍化と合わせて見ると、労働市場の過熱を理由に追加引き締めを急ぐべきだという判断には力が削がれる結果となった。
これは雇用統計の発表前から出ていたFRBの様子見姿勢を裏付けるものである。ウィリアムズ総裁は同じ講演で、労働市場が物価圧力を高めているという証拠はないと述べた。また、9月の利上げ後には急ぐ必要なく追加情報を確認する時間があると説明した。
市場の据え置き期待も高まった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2日、雇用統計の発表直後、CMEグループのフェデラル・ファンド(FF)金利先物に織り込まれた10月の据え置き確率が、発表前の72%から86%に上昇したと報じた。これは当時の報道時点の数値である。
残る変数はお金(賃金)以外の物価圧力だ。FRBのフィリップ・ジェファーソン副議長は1日、名目賃金の上昇基調が鈍化する中でも、住居費を除くコアサービス物価の上昇率は今年に入って上昇していると指摘した。AI関連の需要急増も関連商品やサービスの生産コストを引き上げていると説明した。賃金の上昇が緩やかになっても他のコストが上がり続ければ、物価安定は遅れる可能性がある。
したがって、10月の据え置き見通しと年内追加利上げ見通しの双方が残っている。ロイターが伝えたJPモルガンの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は、賃金の鈍化によって利上げを急ぐ必要性は低下したと評価しつつも、今後のコア物価の鈍化が緩慢になるという前提のもとで12月の利上げ見通しを維持した。
次なる主要な確認指標は14日に発表される9月の消費者物価指数(CPI)だ。賃金の鈍化に続き、商品やサービスの物価上昇基調も落ち着きを見せているかどうかが肝要となる。FRBはこれを通じて、9月の利上げ後に金利を据え置いて様子を見るべきか、追加対応が必要かを判断することになる。







