既存治療薬に比べ再発・死亡リスク53%減…3年無病生存率92.4%
転移性かんに続き術後補助療法まで拡大…SC製剤は臨床第1相を実施中
第一三共とアストラゼネカの抗体薬物複合体(ADC)抗がん剤「エンヘルツ(Enhertu)」が、欧州連合(EU)で早期乳がんの治療薬として承認された。転移性かんに続き、手術後の再発を防ぐための治療にも使用できるようになり、アルテオジェン(196170)が技術移転した皮下注射(SC)製剤の長期的な商用化の機会も広がった。
第一三共は27日、欧州委員会(EC)がエンヘルツをHER2陽性早期乳がんの成人患者における術後補助療法として承認したと発表した。手術前にタキサン系抗がん剤とHER2標的治療を受けたものの、手術後にも浸潤性の遺残がんが確認された患者が対象となる。
今回の承認は、エンヘルツがEUにおいて完治を目的とする早期乳がん治療に初めて参入したことを意味する。従来は主に切除不能または転移性のがんに使用されていたが、今後は手術を終えた患者の再発予防にも処方できるようになる。
承認の根拠となったグローバル臨床第3相試験「DESTINY-Breast05」には1635人の患者が参加した。エンヘルツ投与群は、従来の標準治療薬であるトラスツズマブ デュマタンシン(T-DM1)投与群に比べ、浸潤性疾患の再発または死亡リスクが53%低かった(HR=0.47)。
3年の浸潤性無病生存率(IDFS)は、エンヘルツが92.4%、T-DM1が83.7%と8.7パーセントポイントの差を示した。安全性は従来知られている水準と概ね一致し、新たな安全性の懸念は確認されなかった。
エンヘルツは今年6月にEUでHER2陽性転移性固形がんの治療薬として承認され、9月にはHER2陽性転移性乳がんの一次治療薬として許可された。今回の早期乳がん承認まで、直近4カ月間で3回適応拡大を果たした。
アルテオジェンは2024年11月、第一三共とエンヘルツのSC製剤開発・商用化に向けた独占的技術輸出契約を締結した。最大契約規模は3億ドルで、商用化後の販売ロイヤルティは別途となる。
アルテオジェンの「ALT-B4」技術を適用したエンヘルツSC製剤は、現在臨床第1相の段階にある。再発性・転移性固形がん患者を対象に安全性や薬物動態学的特性などを評価している。
早期乳キャンは手術後の再発防止のために一定期間抗がん剤を繰り返し投与する。静脈注射よりも投与時間を短縮できるSC製剤が開発されれば、患者の治療利便性と医療機関の投薬効率を高める余地がある。
現在進行中のSC臨床試験は、早期乳がん患者を対象とした研究ではない。今回のEU承認も既存の静脈注射製剤に関するものであり、アルテオジェンの追加収益に直接結びつくわけではない。今後、SC製剤の臨床開発と承認の範囲に応じ、早期乳がんが新たな商用化の対象となる可能性がある。







