テスラ(Tesla)とスペースX(SpaceX)の境界線急速に薄れつつある。イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が両社の合併の可能性にあらためて含みを持たせた中、株式の相互保有や製品取引が拡大し、半導体やデータセンターなどを網羅した大規模生産プロジェクトまで共同で推進するなど、両社の事業領域が各所で重なり合っている。
今年に入り、合併論を巡る構図にも変化が生じている。スペースXが生成AI(人工知能)「グロック(Grok)」を開発したxAIを買収したのに続き、今年6月に株式公開(IPO)を果たしたことで、企業価値がテスラを上回ったためだ。かつては非上場企業であるスペースXをテスラが取り込むというシナリオが主に議論されていたが、今や規模を拡大したスペースXがテスラを吸収するというシナリオまで取り沙汰されている。
直近の3取引日において、スペースXの株価は約18%、テスラは約7%上昇した。両社の事業および資本関係が緊密化する中、マスク氏が再び合併の可能性に言及したことで、市場の関心も高まっている。
「なぜ2社は別々なのか」…合併の可能性に再び含みを持たせたマスク氏
マスク氏は先月15日(現地時間)、米国のテック・投資系ポッドキャスト「オールイン(All-In)」の年次イベント「オールイン・サミット(All-In Summit)」で、テスラとスペースXが今後も別個の企業として存続するのかと問われた。両社がすでに多くの分野で緊密に協力しているとし、将来的にどのような選択を下すかは分からないという趣旨で回答した。同席したスペースXのグウィン・ショットウェル(Gwynne Shotwell)社長も、両社チームの協業状況について「自分が考えていたよりも急速に統合が進んでいる」と述べた。
両社の結合の可能性が取り沙汰されたのは今回が初めてではない。今年7月のテスラの決算発表で、マスク氏はテスラとスペースXの間で重複する領域が増加していると言及しており、それに先立つ1月には、ブルームバーグ通信がスペースXとテスラ、あるいはxAIとの結合の可能性を検討していると報じていた。
当時、候補として共に挙げられていたxAIは、その後実際にスペースXに買収された。マスク氏が複数の企業をそれぞれ経営しつつ必要に応じて協業する水準を超え、事業的に結びつきの強い企業を一つに統合した前例ができたわけだ。
20億ドルの出資に数億ドルの取引…テスラとスペースX、すでに緊密な関係
両社の距離が縮まっている兆候は、資本と事業の両面から確認される。テスラは当初、xAIに20億ドルを投資したが、xAIがスペースXに買収されたことに伴い、当該投資分がスペースXの普通株に転換され、現在はスペースXの株式の1%未満を保有している。
製品取引の規模もすでに数億ドルに達している。テスラは今年上半期、スペースXにエネルギー貯蔵システム(ESS)「メガパック(Megapack)」を供給し、4億500万ドルの売上高を記録した。一方、昨年はスペースXとxAIがテスラの製品・サービスを約6億5000万ドル規模で購入した。このうちxAIのメガパック購入額が約5億600万ドル、スペースXは約1億4400万ドル規模のサイバートラック(Cybertruck)を含む製品・サービスを取得した。
協力は個別の製品売買に止まらない。スペースXは投資説明書の中で、テスラと大規模生産施設「テラファブ(Terafab)」の開発に向けた基本協力体制を構築したと明らかにした。AIやロボット、宇宙事業など、マスク氏が推進する未来の成長事業に不可欠な半導体やデータセンター、電力インフラを長期的に確保するための構想だ。マスク氏は最近、世界最大の半導体受託製造(ファウンドリー)企業であるTSMCとも「テラファブ」に関する協力を協議していると認めた。
テスラが先月確保した300億ドル規模の新たなクレジットライン(融資枠)も、こうした投資計画と軌を一にしている。資金の一部をスペースXと共同で推進する生産プロジェクトなどに投入する計画だ。テスラの自動車・ロボット、スペースXの宇宙事業、xAIの人工知能を牽引するための基盤を共同で構築する動きが具体化しているのである。
巨大化したスペースX…変化した合併の構図
スペースXは今年6月のIPOを通じて75万ドルではなく750億ドルを調達し、当時の企業価値評価額は約1兆7700億ドルに達してテスラを上回った。上場後もマスク氏が約82%の議決権を掌握し、テスラよりも強固な支配力を維持しているという点も相まって、市場で議論される合併の方向性も過去とは様変わりしている。
テスラがスペースXを買収する形ではなく、スペースXがテスラを飲み込むというシナリオだ。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、スペースXの上場後に両社が結合した場合、資金調達および事業統合の面でメリットが生じる可能性があると分析している。
もちろん、企業を統合せず現在の関係を維持するという選択肢もある。すでに相互に株式を保有し、製品を売買しながら共同プロジェクトまで推進できる状況下において、合併に伴う複雑な手続きやコストをあえて甘受する必要性は大きくないとの見方もある。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、スペースXがテスラを買収する構造が現実のものとなった場合、マスク氏に対するテスラの業績連動報酬や支配力にも影響を及ぼす可能性があると分析した。
中国事業や米国防との利害対立…合併に向け残るハードル
事業的に接近した両社を実際に一つの企業に統合する作業は、はるかに複雑である。とりわけ、テスラは上海工場を拠点に中国で大規模な生産・販売事業を展開しており、中国市場は今年上半期の全売上高の約18%を占める一方、スペースXは米政府および国防総省を主要顧客として抱えており、両社が置かれた地政学的環境は大きく異なる。
スペースXの衛星通信サービス「スターリンク(Starlink)」や衛星・ロケット事業は、米国の国家安全保障に直結している。両社が統合されれば、テスラの中国における生産・販売事業と、スペースXの米国国防事業が同一企業内に混在することになり、米中双方における規制や安全保障上の問題が一層複雑化する可能性がある。
実際にWSJは、テスラ内部において将来的なスペースXとの結合に備え、中国事業を分離する案が議論されたと報じた。もっとも、マスク氏が同報道を「フェイクニュース(偽ニュース)」と即座に否定したことから、中国事業の分離が実際に推進されていると見るのは困難である。
さらに、企業価値の算定や合併比率、テスラ株主の承認など、解決すべき課題も残されている。合併が実際に実現するかどうかは依然として不透明だ。しかし、テスラがスペースXの株主となり、数億ドル規模の製品取引に続いて大規模生産プロジェクトまで共同で推進する中、両社の距離は以前よりも確実に縮まっている。






